

着物を見ていて、
「なんてきれいな金色なんだろう」
「この着物のシルバーの部分はどうやって作っているの?」
と思ったことはありませんか?
それはもしかしたら「金彩」の技術を使って、作られているかもしれません。
金彩が施された着物や帯は、写真で見るのと、実際に目の前で見るのとでは、印象が大きく違います。
実物を見ると、その圧倒的な輝きや煌めきに驚かされることがあります。
そして、
「本当にこれが金彩で表現されているの?」
と思わず見入ってしまうほど、細かな模様や立体感、さまざまな色合いが表現ていることも。
今回は、そんな奥深い金彩の世界と、伝統を受け継ぎながら新しい表現へ挑戦している光映工房の「京金彩」についてご紹介します。
この記事でわかること
- 着物や帯に使われる「金彩」とは何か
- 金箔と着物文化の関係
- 金彩のルーツと日本で発展した技法
- 和田光正氏と光映工房のものづくり
- 約150色の箔から生まれる豊かな表現
- 「盛り上げ彩色」の立体的な美しさ
- 金彩の着物や帯を見るときの楽しみ方


金彩とは、着物や帯の生地に、金箔や金粉などを用いて模様を表現する技法です。
金色の輝きを生地の上へ加えることで、柄をより華やかに見せたり、光の当たり方によって異なる表情を生み出したりすることができます。
金彩と聞くと、
「金色の模様をつけるだけなのでは?」
と思う方もいらっしゃるかもしれません。
ところが、実際の金彩はそれだけではありません。
金の輝きに加えて、細かな線、濃淡、立体感、異なる色合いの箔などを組み合わせることで、まるで絵画のような豊かな表現を生み出すことができます。
POINT
金彩の魅力は、単純な「金色」だけではありません。
箔の色、模様の細かさ、凹凸、光の反射などを組み合わせることで、さまざまな表情が生まれます。

金が人を惹きつけてきた歴史は、とても古いものです。
金は、その美しい輝きと変化しにくい性質から、古くから特別なものとして扱われてきました。
さらに金には、薄く伸ばすことができるという特徴があります。
そのため、金を非常に薄い箔にして、建築、美術品、工芸品など、さまざまなものに用いることができました。
やがて、その特別な輝きは衣服の世界にも取り入れられていきます。
こうして、「金の輝きを身につける」という文化が育っていきました。

出典:国立文化財機構所蔵品統合検索システム(丹地花葉文様金襴 大鶏頭金襴)
衣服に金の輝きを取り入れる方法には、いくつかあります。
金を糸へ巻きつけたり、金箔を貼った紙を細く切って糸のようにし、織物へ織り込んだりする方法があります。
金襴(きんらん)や金糸を使った織物などは、その代表的なものです。
一方で、金箔や金粉などを生地そのものへ直接施していく方法があります。
これが「金彩」です。
日本では古くから、「摺箔(すりはく)」や「押箔」、「振落とし金砂子(ふりおとしきんすなご)」など、金を使って生地へ美しい文様を表現する技法が発展してきました。
現代の金彩友禅にも、こうした長い歴史の中で培われてきた技術がつながっています。
ワンポイント
金糸のように「織り」の中へ金を取り入れる方法と、生地の表面へ箔や金粉を施す「金彩」では、輝き方や表情にも違いがあります。

出典:国立文化財機構所蔵品統合検索システム(二重蔓牡丹唐草文様印金)
金彩の歴史をたどっていくと、中国の「印金(いんきん)」と呼ばれる技法にも行き着きます。
印金は、金や銀を使って布へ文様を施す技法です。
こうした技術が各地へ伝わり、日本でも金を使った装飾表現が発展していきました。
出典:国立文化財機構所蔵品統合検索システム(摺箔(子方) 紫地色紙葡萄模様)
日本では桃山時代から江戸時代初期にかけて、摺箔や押箔、金砂子などを用いた華やかな小袖や能装束が作られています。
数百年を経た現在でも、その大胆さや繊細さに驚かされるような作品が残されています。
そして、こうした過去の優れた金彩表現に強く魅せられた一人の職人がいました。
その職人が、和田光正氏です。
和田氏は中学校を卒業後、叔母に連れられて友禅の彩色仕上げ工房を訪れました。
そこで目にした職人たちの仕事に強く心を動かされ、職人の道へ進むことを決意したといいます。
当時、金彩加工は、染め全体の中では必ずしも主役として扱われる仕事ではありませんでした。
染めの補助や仕上げとして用いられることも多く、金彩だけで作品全体を表現するという発想は、現在ほど一般的ではありませんでした。
しかし和田氏は、桃山時代から江戸時代初期に作られた摺箔や押箔、金砂子を用いた名品に注目します。
出典:国立文化財機構所蔵品統合検索システム(縫箔 白地花菱亀甲蒲公英雪輪草花模様)
そこには、金彩だけでも驚くほど豊かな表現の世界がありました。
「この素晴らしい技術を、現代でもっと発展させたい」
そんな思いから、金彩の研究と改良が重ねられていきます。
金彩を美しく、そして長く楽しめるものにするために、大きな課題となっていたのが「糊」でした。
金彩では、箔を生地に定着させるための接着技術が重要になります。
しかし、従来の糊には湿気や乾燥の影響を受けやすいものもありました。
湿度が高いとベタついたり、時間の経過とともに変色やひび割れ、はがれにつながったりすることがあります。
反対に乾燥すると、金彩を施した部分が硬くなり、生地本来のしなやかさを損なう場合もあります。
そこで和田氏は、染色試験場や大学の研究室などの協力も得ながら、糊の研究を重ねました。
そして、金彩を施した部分が生地の柔らかさを保ちながら、はがれにくく、耐久性を考えた接着技術へと改良されていきます。
POINT
美しい金彩を作るためには、表面の箔だけでなく、その下で箔を支える「糊」も重要です。
見えない部分の研究が、現在の豊かな金彩表現を支えています。
光映工房の金彩の大きな魅力のひとつは、華やかな見た目だけではなく、長く身につけることまで考えたものづくりにあります。

和田氏が修業を始めた頃、扱っていた箔の色はおよそ10色ほどだったといいます。
そこから一色ずつ研究を重ね、色の表現を増やしていきました。
現在では、約150色もの多彩な箔を用いた表現へと発展しています。
金彩といっても、すべてが同じ金色ではありません。
こうした多彩な箔に、柔軟な糊や細かな型紙の技術を組み合わせることで、金彩だけでも繊細な表現ができるようになっていきました。
単純な「金色」の世界ではありません。
光の加減によって違って見える色。
細かな模様。
濃淡。
金属を思わせる輝き。
そして、生地から浮かび上がるような立体感。
こうした技術の組み合わせによって生み出されるのが、「金彩友禅」の豊かな世界です。

光映工房の京金彩を見るときに、ぜひ注目していただきたいのが「盛り上げ彩色」です。
名前の通り、金彩を平面的に施すだけではなく、模様そのものに立体感を持たせる表現です。
通常の平面的な金彩と見比べると、模様の一部に細かな凹凸を感じることがあります。
その凹凸へ光が当たると、面ごとに反射する方向が変わり、金彩がさまざまな角度へ煌めきます。
正面から見ると落ち着いて見えていた模様が、少し角度を変えただけでキラッと輝く。
近くで見ると細かな立体感があり、少し離れて見ると一つの大きな柄として浮かび上がる。
これも、京金彩ならではの魅力のひとつです。
ワンポイント
盛り上げ彩色を見るときは、真正面だけでなく、少し横からも見てみてください。
光の反射が変わり、模様の立体感や煌めきがより分かりやすくなります。
光映工房の京金彩の魅力は、古くからある技法をそのまま再現しているだけではないところにあります。
長い歴史を持つ金彩の技術を基礎にしながら、現代の着物や帯にふさわしい表現へと進化させています。
その特徴として、次のようなものがあります。
つまり、
「昔の技法を守る」だけではなく、
「受け継いだ技術を今の時代にどう生かすか」
を追求しているのです。
伝統とは、昔とまったく同じものだけを作り続けることではありません。
長い歴史の中で培われた技術を大切にしながら、新しい材料、新しい表現、新しい使い方へつなげていく。
そこに、光映工房の京金彩のおもしろさがあります。
金彩が施された着物や帯をご覧になるときは、ただ「きれい」と見るだけではなく、少し視点を変えてみてください。
特に注目していただきたいのは、次の3つです。
金彩は、見る角度や光の当たり方によって表情が変わります。
着物や帯を少し動かしてみるだけでも、キラッと輝く場所が変わることがあります。
正面から見たときと、斜めから見たとき。
ぜひ両方を比べてみてください。
少し近づいて見ると、細かな線や模様が何層にも重なっていることがあります。
「こんなところまで表現されていたの?」
という発見ができるのも、金彩を見る楽しさです。
盛り上げ彩色が施された部分には、細かな凹凸があります。
光が当たることで、その凹凸がさらに際立ち、まるで模様が生地の上から浮かび上がっているように見えることもあります。
スタッフより
金彩の着物や帯は、少し離れて全体を見るだけでなく、ぜひ近くでもご覧ください。
「遠目の華やかさ」と「近くで初めて分かる細かな技」の両方を楽しむことができます。
金彩について知る前は、
「きらきらしている模様が入った華やかな着物」
と見ていたものが、技法を知ることで少しずつ違って見えてきます。
「ここは箔の色が違うのかな?」
「この部分は少し立体的になっている」
「角度を変えると、こんなに輝き方が違うんだ」
と、細かな部分まで目に入るようになります。
そして、金彩の着物を見るうえでぜひ覚えておいていただきたいのが、
金彩は、写真だけでは魅力を伝えきれない。
ということです。
実際に見ると、想像していた以上の煌めきや奥行きに驚くことがあります。
「本当にこれが金彩なの?」
と思うほど、繊細な線や立体感、色彩の表現が広がっています。

桃山時代から江戸時代初期の名品にも見られる、金を使った華やかな装飾表現。
その歴史に魅せられ、現代の技術によって新しい表現へ発展させてきた職人たち。
そして現在は、和田光正氏の息子である和田正央氏が、二代目和田光正として光映工房を受け継いでいます。
古くから続く技術だからこそ、そこには長い年月の中で積み重ねられてきた工夫と挑戦があります。
伝統の美しさと、現代の技術。
その両方が重なり合うことで、時を超えて輝く「京金彩」の世界が生まれています。
いいえ。
金彩にはさまざまな色合いや光沢の箔があり、銀色やブルー、紫、ピンクなど、様々な色があります。
だくさんの色を組み合わせることで豊かな表情を作ることができます。
光映工房では、多彩な箔を使い分けながら、繊細な色や柄を表現しています。
どちらも金の輝きを生かす表現ですが、技法は異なります。
金糸は織物の糸として用いられるのに対し、金彩は箔や金粉などを生地の表面へ施して模様を表現します。
盛り上げ彩色は、模様に凹凸をつけ、平面的な金彩とは異なる立体感を生み出す表現です。
光の当たり方によって陰影や煌めきが変わるため、角度を変えて見ると、より魅力が分かります。
もちろん大丈夫です。
専門的な知識がなくても、まずは実物を見て、
「きれい」
「すごい」
「どうやって作っているんだろう?」
と感じていただくだけで十分です
。
紀久屋では、実際の着物や帯をご覧いただきながら、技法についても分かりやすくご案内しています。
金彩は、単に着物や帯へ金色を加えるだけの技法ではありません。
金箔や色箔、型紙、接着技術、立体的な加工など、さまざまな技術が組み合わさることで、豊かな表現が生まれています。
光映工房では、古くから受け継がれてきた金彩の技術をもとにしながら、
などを組み合わせ、新しい京金彩の世界を作り続けています。
金彩の美しさは、画面だけではなかなか伝わりません。
光が当たったときの煌めき。
近くで初めて見える細かな表現。
角度を変えたときに現れる、新しい色や立体感。
ぜひ実物をご覧になり、その違いを確かめてみてください。
紀久屋より
紀久屋でも、岡山店・倉敷店にて下記期間中に金彩が施された着物や帯をご覧いただける機会があります。
金彩について詳しい知識がなくても大丈夫です。
まずは「きれい」「好き」「もっと近くで見てみたい」という気持ちから、着物の世界を楽しんでみてください。
岡山店
2026年9月25日(金)~28日(月)
倉敷店
2026年10月2日(金)~5日(月)
写真では伝わりきらない金彩の輝きや、細かな模様、盛り上げ彩色の立体感。
実際の着物や帯を手に取って見ると、画面で見ていたときとは違った発見があります。
「京金彩の着物を見てみたい」
「金彩の技法についてもっと知りたい」
「自分に似合う金彩の着物や帯を見てみたい」
そんな方は、どうぞお気軽に紀久屋へご相談ください。
(定休日:毎週火曜日)
岡山本店:086-232-7766
倉敷店:086-422-2100
津山店:0868-32-5298
四万十店:0880-31-2150

