
「9月になったら少し涼しくなると思ったのに、まだまだ暑い……」
「汗をかいたら、大切な着物はどうしたらいいの?」
着物を始めたばかりの方なら、そんな心配をしたことがあるかもしれません。
最近は、9月に入っても30℃を超えるような暑い日があります。
暦の上では秋が近づいていても、外へ出ればまだ真夏のように感じることも珍しくありません。
「9月だから単衣(ひとえ)を着なければ」と思っていても、暑さを我慢しながら着物を着るのはつらいものです。
でも、夏から残暑にかけての着物は、ちょっとした工夫でぐっと快適になります。
POINT
大切なのは、昔からの着物の決まりだけにとらわれすぎず、その日の気温や湿度、自分の体調に合わせて無理なく楽しむことです。
この記事では、着物を着始めたばかりの方にも分かりやすく、残暑の着物を少しでも涼しく楽しむための5つの工夫をご紹介します。
肌着や長襦袢(ながじゅばん)の選び方、帯まわりの工夫、着付け前の準備、外出中の暑さ対策、そして汗をかいた後のお手入れまで、順番に見ていきましょう。
「暑いから着物は無理」とあきらめる前に、できることから一つずつ取り入れてみてください。
この記事でわかること
- 9月の暑い日に着物を楽しむときの考え方
- 夏用の肌着・長襦袢を使うメリット
- 補正や帯まわりを涼しくする工夫
- 外出中の暑さ・汗・水分への対策
- 汗をかいた着物の帰宅後のお手入れ
- 残暑に秋らしさを取り入れるコーディネート


着物には昔から、季節によって装いを替える「衣替え」の考え方があります。
一般的には、6月と9月は単衣、7月と8月は夏物という目安がよく知られています。
けれど、昔と今では気候が大きく変わっています。
9月になったからといって、急に涼しくなるわけではありません。
気温が高い日に「9月だから秋の着方にしなくては」と何枚も厚く重ねてしまうと、身体への負担も大きくなります。
そこで覚えておきたいのが、
「暦だけではなく、その日の気温・湿度・自分の体感も大切にする」
という考え方です。
特に着物を始めたばかりの方は、
「季節の決まりを間違えたらどうしよう」
と心配になるかもしれません。
けれど、着物を楽しく続けるためには、まず元気に過ごせることが大切です。
暑さが厳しい日は、肌に近い部分を涼しくしたり、軽い長襦袢を選んだりして、今の気候に合わせた工夫を取り入れてみましょう。

暑い日の着物は、「着物を薄くする」だけでなく、肌に近いところから一つずつ熱や湿気を減らしていくことがポイントです。
ここからは、初心者の方にも取り入れやすい5つの工夫をご紹介します。

暑さ対策で、まず見直したいのが肌着と長襦袢です。
肌に近いところに熱や汗がこもると、着物全体を暑く感じやすくなります。
夏用の和装肌着には、汗を吸いやすく乾きやすいものや、さらっとした肌ざわりのものがあります。
綿や麻、高島ちぢみなど、肌に張り付きにくい素材も選択肢の一つです。
長襦袢も、麻や絽(ろ)などの軽くて風を通しやすいものを取り入れると、暑い時期の負担を減らしやすくなります。
また、家庭で洗えるタイプの長襦袢も、汗をかきやすい季節には心強い存在です。
お客様の声
カジュアルな着物を始めるのをきっかけに、涼しく洗いやすい長襦袢をご用意されたお客様から、
「軽くて着やすく、お手入れもしやすいので、暑い時期の着物が以前より気軽になりました」
というお声をいただくことがあります。
「汗をかいたらどうしよう」という不安が少なくなると、着物でのお出かけにも挑戦しやすくなります。
紀久屋のスタッフ自身も、暑い時期には長襦袢を軽いものへ替えて着ています。
以前は、着付け教室の間に汗をかくこともありました。
ところが、長襦袢を軽いものへ変えてみると、着付けのしやすさや着心地に違いを感じました。
スタッフより
「長襦袢を変えるだけで、こんなに違うんだ」
肌に近いところに着るものだからこそ、素材や重さを見直すことで、暑い日の着心地が変わることがあります。
長襦袢は着物の下に隠れてしまうため、つい後回しにしがちです。
しかし実際には、身体に近いところにあるからこそ、暑さや汗の感じ方を大きく左右します。
「夏の着物は暑い」「着ていると重く感じる」という方は、着物そのものだけでなく、長襦袢も一度見直してみてはいかがでしょうか。

夏は、着付けを始める前から汗をかいていることがあります。
そこで、着付け前に首まわりや背中、わきなどの汗をやさしくぬぐっておくのがおすすめです。
さらに、着付けを始める前から部屋を涼しくしておきましょう。
特に残暑の時期は、秋雨や台風などの影響で湿度が高くなる日もあります。
湿度が高いと汗が乾きにくく、気温以上に蒸し暑く感じることがあります。
エアコンの冷房や除湿運転を使い、着付けを始める前に部屋の温度と湿度を整えておくことが大切です。
POINT
「着てから身体を冷やす」のではなく、着る前から汗をかきにくい環境を作っておくと、着付け中の負担を減らせます。
ただし、暑い時期に補正を重ねすぎると、身体のまわりに熱がこもりやすくなります。
薄手のタオルやガーゼ、通気性のよい補正パッドなどを使い、着姿を整えるために必要な部分だけを補うようにしてみましょう。
補正を軽くすると、ごわごわした感じが減り、動きやすく感じることもあります。
大切なのは、補正をすべてなくすことではありません。
自分の体型に必要な量を知り、入れすぎないことがポイントです。

着物を着ていて、特に熱がこもりやすいのが帯まわりです。
帯、帯板、補正などが重なるため、身体の中心に熱や汗がたまりやすくなります。
そこで、暑い時期はメッシュ素材の帯板や、へちまなどを使った通気性を考えた和装小物を取り入れる方法があります。
カジュアルなお出かけなら、季節や着物の格に合わせて、軽い帯を選ぶのも一つの方法です。
ワンポイント
夏の着付けは、単純に「薄くする」だけでなく、熱や湿気がこもりにくい素材を選ぶことを意識してみましょう。

足元も、意外と汗をかきやすい場所です。
夏向けの足袋や、汗を吸いやすい素材の肌着などを取り入れると、足元の蒸れを軽くしやすくなります。
着物の暑さ対策は、一つの大きな工夫よりも、肌に近いところから小さな工夫を重ねることが快適さにつながります。

暑い日に保冷剤を使うと、ひんやりとして気持ちがいいものです。
ただし、着物を着ているときは使う場所や時間に注意しましょう。
特に、帯の中や背中、腰など、すぐに取り出せない場所へ長時間入れておく方法は避けた方が安心です。
冷たいものを長時間肌へ当て続けると、皮ふを傷めるおそれがあります。
また、保冷剤の表面には結露による水滴がつくことがあります。
その水分が正絹(しょうけん)の着物や帯につくと、水ジミなどにつながる可能性があります。
保冷剤を使う場合は、
といった点を意識しましょう。
POINT
保冷剤を使うときは、「身体は涼しく、着物はぬらさない」ことを意識しましょう。

外出先では、身体を冷やすものだけでなく、そもそも身体へ熱をためない工夫も大切です。
無理をして長時間歩くよりも、途中で休憩できる場所をあらかじめ調べておくと安心です。
着物を着ていると、汗をかいていても気付きにくいことがあります。
のどが渇く前から、こまめに水分をとるようにしましょう。
長時間屋外で過ごす場合は、体調や発汗量に合わせて休憩を取り、必要に応じて塩分も補います。
頭痛やめまい、吐き気、強いだるさなどの異変を感じた場合は、着物姿を保つことよりも体調を優先し、すぐに涼しい場所へ移動してください。
スタッフより
「せっかく着物を着たから」と無理をする必要はありません。
暑い時期は、いつもより短い時間のお出かけから楽しむのもおすすめです。

暑い時期の着物で意外と気をつけたいのが、冷たい飲み物につく水滴です。
グラスやペットボトルの結露が手につき、そのまま着物へ触れてしまうことがあります。
特に正絹の着物は、水分によってシミや輪ジミができる場合があります。
席についたら、大きめのハンカチやナプキンを膝に広げておくと安心です。
冷たいグラスを持った後は、手についた水分を拭いてから着物へ触れるようにしましょう。
ワンポイント
夏のお出かけには、大きめのハンカチを一枚持っておくと便利です。
汗を押さえるだけでなく、膝掛け代わりや飲み物の水滴対策にも使えます。
「今日はあまり汗をかかなかった」と思っていても、着物や長襦袢は身体から出た湿気を含んでいることがあります。
帰宅したら、すぐに畳んでタンスへしまうのではなく、着物ハンガーに掛けて風を通しましょう。
直射日光の当たらない、風通しの良い室内で陰干しします。
着物だけでなく、長襦袢や帯も一緒に状態を確認しておくと安心です。
汗をたくさんかいた日や、シミ・汚れが気になる場合は、早めに着物専門店へ相談することをおすすめします。
正絹の着物には、家庭での水洗いが向かないものがあります。
「汗をかいたから水で拭いておこう」
「飲み物をこぼしたから早く対処した方がいいと思って、急いで水で洗った」
と自己判断で処置すると、色落ちや輪ジミ、生地の傷みにつながることがあります。
POINT
汗や汚れが気になる場合は、強くこすったり水をつけたりせず、まず着物の状態を確認しましょう。
判断に迷ったら、専門店へ早めに相談すると安心です。

残暑の着物でおすすめしたいのが、
「体感は涼しく、見た目は秋らしく」
という考え方です。
着物のおしゃれには、季節を少し先取りする楽しみがあります。
まだ暑いからといって、見た目まで真夏のままにする必要はありません。
たとえば、次のような深みのある色を帯や小物に取り入れると、秋らしい雰囲気を作りやすくなります。
菊、萩(はぎ)、すすき、トンボやぶどうなど、秋を感じる柄を取り入れるのも素敵です。
「涼しくしたいから夏用の長襦袢を着たい。でも、9月なのに夏っぽく見えないかな?」
そんな心配をされる方もいらっしゃいます。
でも、季節感は長襦袢だけで決まるものではありません。
長襦袢は身体が楽なものを使い、半衿や帯、帯締め、帯留めなど、外から見える部分で秋らしさを取り入れることもできます。
たとえば、帯締めを深みのある色に替えたり、秋の草花を思わせる帯留めを使ったりするだけでも、印象は変わります。
残暑コーディネートの考え方
暑さ対策は涼しく。見た目は少し秋らしく。
身体への負担を減らしながら季節感を楽しめるのも、残暑ならではの着物のおしゃれです。
昔からの衣替えでは、9月は単衣の時期とされています。
ただし、現在は9月でも厳しい暑さになることがあります。
特に普段のお出かけでは、着用する場所や目的を考えながら、その日の気温や湿度、体調も大切にして選びましょう。
涼しい肌着や長襦袢を取り入れるだけでも、身体への負担を減らしやすくなります。
暑さが残る時期には、身体に近い長襦袢を涼しいものにすることで快適に過ごしやすくなります。
麻や絽、軽くて通気性を考えたものなど、ご自身が快適に過ごせる長襦袢を選びましょう。
帯や帯締めなど、外から見える部分で秋らしさを取り入れる方法もあります。
すぐに取り出せない場所へ長時間入れておく方法はおすすめしません。
冷えすぎによる皮ふへの負担や、保冷剤の結露が着物や帯へつく可能性があるためです。
使用する場合は布で包み、首元など、すぐに外せる場所で短時間ずつ使いましょう。
正絹の着物は、家庭での水洗いが向かないものが多くあります。
まずは陰干しをして湿気を飛ばし、汗やシミが気になる場合は着物専門店へ相談しましょう。
ご家庭で水や洗剤を使う前に、素材や加工方法を確認することが大切です。
落ち着いた色や柄の浴衣を、長襦袢や足袋などと組み合わせて着物風に楽しむ方法もあります。
ただし、浴衣は基本的に夏のカジュアルな装いです。
素材や柄、着用する時期、行き先、相手との関係などを考えながら、場面に合った装いを選びましょう。
スタッフより
「この時期は何を着たらいい?」と迷うことは、着物を長く楽しんでいる方にもあります。
判断に迷ったら、着て行く場所や予定を伝えて専門店へ相談すると、より安心してコーディネートを選べます。
残暑の着物で一番大切なのは、暑さを我慢することではありません。
今の気候と自分の体調に合わせて、涼しくする工夫を取り入れることです。
今回ご紹介した5つのポイントを、もう一度確認してみましょう。

そして、もう一つ覚えておきたいことがあります。
「着物の決まり以上に、自分の身体を大切にすること」
「9月だから、この装いにしなくては」
「せっかく着付けたから、最後まで頑張らなくては」
そんなふうに無理をする必要はありません。
着物は、また着ることができます。
暑い日は予定を短くしたり、涼しい場所で休憩したり、ときには着物を着る日を変えたりしてもよいのです。
そして、残暑だからこそ楽しめるおしゃれもあります。
内側は涼しく。
見た目は、少し先の秋へ。
深みのある色の帯や帯締め、秋の草花を感じる柄などを取り入れれば、暑さを我慢しすぎず季節感を楽しめます。
紀久屋より
紀久屋では、着物や帯のコーディネートだけでなく、肌着や長襦袢、夏向けの和装小物、着用後のお手入れについてもご相談いただけます。
「夏に着物を着てみたいけれど、何をそろえればいいの?」
「今持っている着物を残暑にも楽しみたい」
「汗をかいた後のお手入れが分からない」
そんな小さな疑問も、お気軽にご相談ください。
着物を始めたばかりなら、分からないことがあるのは自然なことです。
一つずつ知っていくことで、着物は少しずつ身近なものになっていきます。
紀久屋の無料着付け教室では、着物の着方だけでなく、楽に着るための工夫や、季節に合わせた着こなし、着た後のお手入れなども学んでいただけます。
スタッフ自身が長襦袢を変えて着心地の違いを感じたように、ほんの少し工夫するだけでも、着物の楽しみ方は変わります。
「自分で着物を着て、お出かけしてみたい」
そう思ったときが、始めるタイミングです。
暑さが残る季節も、自分の身体と大切な着物をいたわりながら、無理なく楽しんでみてください。

(定休日:毎週火曜日)
岡山本店:086-232-7766
倉敷店:086-422-2100
津山店:0868-32-5298
四万十店:0880-31-2150
「自分で着物を着られるようになりたい」という方は、紀久屋の無料着付け教室もご利用ください。
実際の着物や小物を見ながら相談したい方は、事前にご来店予約をいただくと、よりスムーズにご案内できます。

