紀久屋スタッフブログ
2019年06月21日
18日、新潟と山形で大きな地震が発生しましたが、皆様ご無事ですか?
もう学校が再開したり、片づけが始まったりとしているところもあるそうですが、湿度が高く蒸し暑い日が続くそうなので、外で作業される方は熱中症にもご注意くださいね。
まだまだ油断できない状況が続きますが、これ以上被害が広がらないこと、そして何より皆様の無事を願っております。
岡山の方でも梅雨というよりは夏日…なんだか蒸し暑い日が続いております。
まだ6月ですが、この時期からこまめな水分•塩分補給など、熱中症対策をしっかり行ってくださいね。
なにより元気が一番!です。
さて、今日は研修旅行ブログ第二弾!!ということで、前回お伝えできなかった
「金彩友禅(きんさいゆうぜん)」
「京紅型(きょうびんがた)」
「西陣織(にしじんおり)」
についてお話しさせていただきます。
(ちなみに、研修旅行ブログ第一弾はコチラから)
「金彩友禅(きんさいゆうぜん)」
金彩友禅とは…金銀箔(金粉その他も含む)で友禅を表現したもの。
和田光正が一代で新たな境地を開いたとされている。
今回は、まさにその金彩友禅の巨頭、和田光正(わだみつまさ)さんのところへお邪魔しました。
ちなみに、一言に「金彩友禅」と言ってもいろいろな技法があります。
押箔:接着剤を箔を貼る部分全体に筆で均一に塗りつけ、表より紙や布で薄く接着剤を取り、すぐに箔がシワにならないように貼りつけ、自然乾燥する技法。
摺箔•板場摺箔:一色毎に彫り分けた型紙を、板に貼った布地の上に置き、型紙の上から接着剤を駒ベラで摺り、箔を貼ったり金彩砂子を振り落としていく技法。
振落とし金彩砂子:表現したい部分に接着剤を筆で塗り、下面に金網を張った振竹筒の中に入れた金彩箔を、硬目筆で振り落としていく技法。
泥金箔:細かい泥金箔を樹脂バインダー(従来はニカワ)などでよく溶いて、筆・タタキ印毛で直接生地に描いていく技法。
盛り上げ箔:粘度の高い接着剤を筒紙や型紙や筆にて、生地の上に塗ってすぐに施し、立体感を線•面•点に表現する技法。
金線描:透明の溶剤・油性合成樹脂と金属粉を混合し、筒紙に入れ、極めて小さな穴のあいた先金をつけて描く技法。
切箔•野毛箔:鹿皮を張った切箔台に金箔をのせ、鋭く削った、シノ竹庖丁で、箔を四角に切り、又、細長く短冊状(野毛箔)に切ったものを生地に、接着剤を塗った部分に振り落として切箔模様を現わす技法。
たくさんある中で、この研修の時には「摺箔•板場摺箔」を実際されているところを見学させていただきました。
型紙の上から特殊な糊を塗り
その上に細かくした箔を筆でのせていきます。
さらっと作業されていましたが、もちろんこれもきちんと柄を合わせた時に色が合うように考えながら箔をのせていくので、出来上がりを想像しながら慎重にしていかなければなりません。
また、のせる色は決まっているのですが、職人さんの手作業になるので、職人さんによって多少雰囲気が変わってくるそうです。
ここもやはり、前回紹介した摺り友禅に近いものを感じました。
型でやっていくため柄自体は同じですが、箔ののせる具合や配色で手仕事•手作業を感じずにはいられません。
また、金彩友禅の華やかさに欠かせないのが、その色の豊富さ。
これは実際に使われる箔ですが、銀箔を染色したもので色の種類は、なんと約150色にも及びます。
100年経っても色が変わらず、ドライクリーニングも対応可能な特殊な糊、それらの開発により、金彩友禅は確立されました。
昔からある金彩加工をしっかりと現代に残しさらに発展させたのは、きちんと金彩の素晴らしさを残し、これからもずっと受け継がれるものにしていきたいという和田さんの熱い想いと情熱が生んだものなのだなと。
作業工程だけでなく、着物や帯などたくさんの作品を見させていただきましたが、金彩友禅の、前に出過ぎないけれどとても高貴で華やかな雰囲気は、どれをとっても和田光正の作品だとわかるくらい、一つのブランドとなし得ているのを感じました。
「京紅型(きょうびんがた)」
京紅型とは…京友禅の染色を取り入れた紅型のこと。
京都特有のはんなりとした雰囲気と鮮やかな優美さがある。
この研修旅行でお邪魔したのは、京都では珍しく全行程を一貫生産されている栗山工房(くりやまこうぼう)さん。
栗山工房さんでは、京都の染めと紅型の融合ということで、京紅型ではなく「和染紅型(わぞめびんがた)」と呼んています。
〈和染紅型ができるまで〉
1.図案作成
2.型彫り
3.糊置き
4.地入れ
5.彩色
6.糊伏せ
7.地染め
8.蒸し
9.水元
紅型といえば、やはり沖縄のイメージが強いかと思いますが、そもそも琉球紅型と京紅型の大きな違いは何で染めているか。
琉球紅型:顔料
京紅型:染料(友禅と同じ)
使う染料によって何が違うかといいますと、やはり出来上がりの雰囲気が違うそう。
顔料を使う琉球の紅型の方は、油絵のようによりはっきりとした色味で重厚感や立体感があり、染料を使う京紅型の方は、水彩画のように色味が優しく透明感があります。
最初の方に、全行程を一貫して行っているとお伝えしたのですが、色留めのための蒸気(上記「8.蒸し」)は大規模な施設が必要となるため、そこだけは専門工場にお任せしているそうです。
一貫生産は、一から手仕事にこだわり作り上げるということ。
デザインから染め、彩色までオリジナル性を追求しているからこそ、一貫生産を続けられているのです。
“紅型の型紙をつくる際に決まりはありません。
こういうものにしないといけない、ということもなく、こんな模様のものがあったらいいな、こんなのつくってみたらいいかなと、常に模索しつつ新しい魅力を引き出せるように色々な型を作っています。
ただ一つ、忘れず大切にしていることは、あくまで「紅型」の良さを引き立たせる模様かどうか、それだけは忘れることなく作っています”と。
今回、見学しながら色々なお話を伺っていると、ものづくりへの真摯な想いがひしひしと伝わってきました。
また、型のデザインなどしているお部屋も見せていただきましたが、机から見える景色が自然いっぱいでとても素敵だなと。
こういう空間だからこそ、新しい発想、素敵なデザインが生まれるのではないかなと思いました。
「西陣織(にしじんおり)」
西陣織とは…多品種少量生産が特徴の、京都(西陣)で生産される先染(さきぞめ)の紋織物の総称。
日本三大織物の一つであり、昭和51年2月26日付で国の伝統工芸品に指定された。
今回訪ねたのは、去年創業120年を迎えられた洛陽織物(らくようおりもの)さん。
〈西陣織ができるまで〉
1.図案
2.紋意匠図
3.源糸
4.糸染め
5.整経
6.綜絖
7.配色
8.製織
今ではだいぶ少なくなってしまった手機で織っているところを見学させていただきました。
自動織機を使う場合と比べて、織るのに時間がかかることはご想像の通りかと思いますが、手織りだと1日10㎝程しか織れないそうで、ものにもよりますが、帯を一本織るのに約2ヶ月かかるんだそう。
そうやって丁寧に織られた帯は、まさに芸術作品。
美しい立体感と多色づかいでとても華やかです。
そんな洛陽織物さんは、西陣の街並みの中、趣ある古い建物をきちんと大切にしながら過ごされているのとても感じられるような、日頃使うもの一つ一つを丁寧に扱われているのが、見学させてもらってすぐにわかりました。
綺麗にお手入れされているお庭には商家には珍しい水琴窟も。
京都、そして西陣という街に恥じないよう、佇まいからその仕事っぷりが感じられるようでした。
今回、京都へ研修に行って一番に思ったことは、そういうところかもしれません。
ただものをつくるところではなく、よりいいものをつくっていくためには「環境」も大切。
住みやすさを追求したり、日常生活において様々な工夫をしたり…そういう積み重ねも作品には反映されていくと思います。
昔からのものを大切にしつつ、新しいものを取り入れていくなかで、生活の基盤である“暮らし”からきんと丁寧に…それこそ「京都」が今なお日本の伝統文化を残していく県と言われる由縁なのかもしれませんね。
最後まで読んでくださってありがとうございます!
たくさんの素敵な着物や帯は、また10月以降順次各店のイベントにて展示いたしますので、またその時をお楽しみ。
もう学校が再開したり、片づけが始まったりとしているところもあるそうですが、湿度が高く蒸し暑い日が続くそうなので、外で作業される方は熱中症にもご注意くださいね。
まだまだ油断できない状況が続きますが、これ以上被害が広がらないこと、そして何より皆様の無事を願っております。
岡山の方でも梅雨というよりは夏日…なんだか蒸し暑い日が続いております。
まだ6月ですが、この時期からこまめな水分•塩分補給など、熱中症対策をしっかり行ってくださいね。
なにより元気が一番!です。
さて、今日は研修旅行ブログ第二弾!!ということで、前回お伝えできなかった
「金彩友禅(きんさいゆうぜん)」
「京紅型(きょうびんがた)」
「西陣織(にしじんおり)」
についてお話しさせていただきます。
(ちなみに、研修旅行ブログ第一弾はコチラから)
「金彩友禅(きんさいゆうぜん)」
金彩友禅とは…金銀箔(金粉その他も含む)で友禅を表現したもの。
和田光正が一代で新たな境地を開いたとされている。
今回は、まさにその金彩友禅の巨頭、和田光正(わだみつまさ)さんのところへお邪魔しました。
ちなみに、一言に「金彩友禅」と言ってもいろいろな技法があります。
押箔:接着剤を箔を貼る部分全体に筆で均一に塗りつけ、表より紙や布で薄く接着剤を取り、すぐに箔がシワにならないように貼りつけ、自然乾燥する技法。
摺箔•板場摺箔:一色毎に彫り分けた型紙を、板に貼った布地の上に置き、型紙の上から接着剤を駒ベラで摺り、箔を貼ったり金彩砂子を振り落としていく技法。
振落とし金彩砂子:表現したい部分に接着剤を筆で塗り、下面に金網を張った振竹筒の中に入れた金彩箔を、硬目筆で振り落としていく技法。
泥金箔:細かい泥金箔を樹脂バインダー(従来はニカワ)などでよく溶いて、筆・タタキ印毛で直接生地に描いていく技法。
盛り上げ箔:粘度の高い接着剤を筒紙や型紙や筆にて、生地の上に塗ってすぐに施し、立体感を線•面•点に表現する技法。
金線描:透明の溶剤・油性合成樹脂と金属粉を混合し、筒紙に入れ、極めて小さな穴のあいた先金をつけて描く技法。
切箔•野毛箔:鹿皮を張った切箔台に金箔をのせ、鋭く削った、シノ竹庖丁で、箔を四角に切り、又、細長く短冊状(野毛箔)に切ったものを生地に、接着剤を塗った部分に振り落として切箔模様を現わす技法。
たくさんある中で、この研修の時には「摺箔•板場摺箔」を実際されているところを見学させていただきました。
型紙の上から特殊な糊を塗り
その上に細かくした箔を筆でのせていきます。
さらっと作業されていましたが、もちろんこれもきちんと柄を合わせた時に色が合うように考えながら箔をのせていくので、出来上がりを想像しながら慎重にしていかなければなりません。
また、のせる色は決まっているのですが、職人さんの手作業になるので、職人さんによって多少雰囲気が変わってくるそうです。
ここもやはり、前回紹介した摺り友禅に近いものを感じました。
型でやっていくため柄自体は同じですが、箔ののせる具合や配色で手仕事•手作業を感じずにはいられません。
また、金彩友禅の華やかさに欠かせないのが、その色の豊富さ。
これは実際に使われる箔ですが、銀箔を染色したもので色の種類は、なんと約150色にも及びます。
100年経っても色が変わらず、ドライクリーニングも対応可能な特殊な糊、それらの開発により、金彩友禅は確立されました。
昔からある金彩加工をしっかりと現代に残しさらに発展させたのは、きちんと金彩の素晴らしさを残し、これからもずっと受け継がれるものにしていきたいという和田さんの熱い想いと情熱が生んだものなのだなと。
作業工程だけでなく、着物や帯などたくさんの作品を見させていただきましたが、金彩友禅の、前に出過ぎないけれどとても高貴で華やかな雰囲気は、どれをとっても和田光正の作品だとわかるくらい、一つのブランドとなし得ているのを感じました。
「京紅型(きょうびんがた)」
京紅型とは…京友禅の染色を取り入れた紅型のこと。
京都特有のはんなりとした雰囲気と鮮やかな優美さがある。
この研修旅行でお邪魔したのは、京都では珍しく全行程を一貫生産されている栗山工房(くりやまこうぼう)さん。
栗山工房さんでは、京都の染めと紅型の融合ということで、京紅型ではなく「和染紅型(わぞめびんがた)」と呼んています。
〈和染紅型ができるまで〉
1.図案作成
2.型彫り
3.糊置き
4.地入れ
5.彩色
6.糊伏せ
7.地染め
8.蒸し
9.水元
紅型といえば、やはり沖縄のイメージが強いかと思いますが、そもそも琉球紅型と京紅型の大きな違いは何で染めているか。
琉球紅型:顔料
京紅型:染料(友禅と同じ)
使う染料によって何が違うかといいますと、やはり出来上がりの雰囲気が違うそう。
顔料を使う琉球の紅型の方は、油絵のようによりはっきりとした色味で重厚感や立体感があり、染料を使う京紅型の方は、水彩画のように色味が優しく透明感があります。
最初の方に、全行程を一貫して行っているとお伝えしたのですが、色留めのための蒸気(上記「8.蒸し」)は大規模な施設が必要となるため、そこだけは専門工場にお任せしているそうです。
一貫生産は、一から手仕事にこだわり作り上げるということ。
デザインから染め、彩色までオリジナル性を追求しているからこそ、一貫生産を続けられているのです。
“紅型の型紙をつくる際に決まりはありません。
こういうものにしないといけない、ということもなく、こんな模様のものがあったらいいな、こんなのつくってみたらいいかなと、常に模索しつつ新しい魅力を引き出せるように色々な型を作っています。
ただ一つ、忘れず大切にしていることは、あくまで「紅型」の良さを引き立たせる模様かどうか、それだけは忘れることなく作っています”と。
今回、見学しながら色々なお話を伺っていると、ものづくりへの真摯な想いがひしひしと伝わってきました。
また、型のデザインなどしているお部屋も見せていただきましたが、机から見える景色が自然いっぱいでとても素敵だなと。
こういう空間だからこそ、新しい発想、素敵なデザインが生まれるのではないかなと思いました。
「西陣織(にしじんおり)」
西陣織とは…多品種少量生産が特徴の、京都(西陣)で生産される先染(さきぞめ)の紋織物の総称。
日本三大織物の一つであり、昭和51年2月26日付で国の伝統工芸品に指定された。
今回訪ねたのは、去年創業120年を迎えられた洛陽織物(らくようおりもの)さん。
〈西陣織ができるまで〉
1.図案
2.紋意匠図
3.源糸
4.糸染め
5.整経
6.綜絖
7.配色
8.製織
今ではだいぶ少なくなってしまった手機で織っているところを見学させていただきました。
自動織機を使う場合と比べて、織るのに時間がかかることはご想像の通りかと思いますが、手織りだと1日10㎝程しか織れないそうで、ものにもよりますが、帯を一本織るのに約2ヶ月かかるんだそう。
そうやって丁寧に織られた帯は、まさに芸術作品。
美しい立体感と多色づかいでとても華やかです。
そんな洛陽織物さんは、西陣の街並みの中、趣ある古い建物をきちんと大切にしながら過ごされているのとても感じられるような、日頃使うもの一つ一つを丁寧に扱われているのが、見学させてもらってすぐにわかりました。
綺麗にお手入れされているお庭には商家には珍しい水琴窟も。
京都、そして西陣という街に恥じないよう、佇まいからその仕事っぷりが感じられるようでした。
今回、京都へ研修に行って一番に思ったことは、そういうところかもしれません。
ただものをつくるところではなく、よりいいものをつくっていくためには「環境」も大切。
住みやすさを追求したり、日常生活において様々な工夫をしたり…そういう積み重ねも作品には反映されていくと思います。
昔からのものを大切にしつつ、新しいものを取り入れていくなかで、生活の基盤である“暮らし”からきんと丁寧に…それこそ「京都」が今なお日本の伝統文化を残していく県と言われる由縁なのかもしれませんね。
最後まで読んでくださってありがとうございます!
たくさんの素敵な着物や帯は、また10月以降順次各店のイベントにて展示いたしますので、またその時をお楽しみ。