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無料きもの着付教室|岡山・倉敷・津山・四万十市・高知の着物専門店、紀久屋

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紀久屋スタッフブログ

衣替えと夏の準備
2018年05月20日
田んぼの水面にうつる青空の中に、根付いたばかりの苗がそよそよと風になびいています。
稲穂が揺れる秋の田んぼも美しいですが、春から初夏にかけてのこの風景が一番好きです。
力強く伸びやかな生命力を感じます。

先日、茨城県水戸市の『梅大使』が夏用の着物に衣替えするため、着付けの講習会を開いたというニュースを耳にしました。
水戸には、岡山市の後楽園と並ぶ日本三名園の一つ偕楽園があります。
梅で有名な偕楽園は、かつて観梅の接待係として芸者さんたちが活躍していたそうです。昭和38年から芸者さんに代わり、毎年『梅むすめ』が選ばれるようになり、以後、10人前後の女性が観光大使として活躍しています。
平成13年には男性でも応募が可能になり、『梅むすめ』改め、『梅大使』となったとか。
毎年振袖と夏用の着物を新調していて、今年の夏の着物はサーモンピンク地に、水戸市の花である萩がデザインされ、蝶が舞う紺色の帯を合わせています。
ちなみに、今まで『梅大使』に選ばれた男性は0人。もし男性が当選した場合、衣裳に何を着るのかが気になるところ。ぜひここは、羽織と袴でビシッとキメてもらいたいものです。

今年から、F1はレースクイーン(グリッドガール)の起用をやめています。レース前のグリッドの時間を使った魅力的な女性たちのPR活動は、華やかなF1の象徴的な存在でしたが、女性蔑視との社会批判を受けた対応のようです。
各地のミスコンも減少傾向にあります。
男女を均等に扱う時代の流れなのでしょうけれど、華やかに着飾った、特に着物姿の女性は、イベントを盛り上げるには最高の演出だと、個人的には思います。
権利を主張するあまり、色気や味気のない画一的な世の中にならないように祈るばかりです。

一般的な着物の本を見ると、袷の時期は10月から5月までと書いてあります。 盛夏の7月、8月は夏物。そして単衣の時期は6月と9月のみ!  
しかしほとんどの場合、今は暑い日には、たとえ袷の季節であっても単衣を着てよいでしょうと追記されています。
日本列島の北海道から沖縄まで、気候はさまざま違うのに、同じ決まりごというのも不思議ですよね。
きものジャーナリストの中谷比佐子先生の著作『和服なら、私』(情報センター出版局)によると、もともとこのしきたりは、明治時代に軍服や制服を着ていた軍人さんたちの衣替えになぞらえているそうです。
軍人さんもとうの昔にいなくなったこの時代、5月でも30℃を超えることもある中で、この約束ごとを守っていたら大変なことになってしまいます。

わたしは暑がりなので、春や秋でも単衣を着ることが多いです。
少し肌寒い日は、大きめのストールを用意します。首元に巻いたり、肩から羽織ったり、膝にかけたり。コートや羽織のようにたたむ必要がなく、くるくる丸めてバッグに放り込めるのでとても重宝します。
また、今の時期のお出かけに必ず持参するのが、晴雨両用の折りたたみ傘です。
春は年間で一番強い紫外線が降り注ぐ時期。以前は日傘を使っていたのですが、訪問先でうっかり忘れることが多く、折りたたみのものに変えました。今は軽くておしゃれな柄ものものがたくさん出ているので、ぜひお気に入りを探してみてください。
そうそう、日焼け止めは、首の後ろと、袖から出た手首から先にもお忘れなく。粗忽もののわたしは、着付けた後に塗ろうとして、何度も着物に日焼け止めのシミをつけそうになっています。よく塗ってから着付けるように習慣付けたいですね。

今年は、桜をはじめとする春の花の開花が、例年より早かったようです。ゴールデンウィークにピークを合わせたい各行楽地の花々も、連休にはすでに盛りを過ぎていたとか。
 ということは、梅雨入りも早いのでしょうか。
 5月末から6月にかけては、わたしの家事が一番忙しくなる時期です。日頃の仕事に加えての梅仕事(梅干し、梅エキス、梅酒)やらっきょうの漬けこみがあるからです。
 らっきょう、梅は、我が家にとって欠かせない食材。毎年大量に仕込んで、夏場の暑さをのりきるために家族全員で少しずつ食べ、お裾分けにしたりもします。
 今は無印良品でも、梅酒づくりのセットを販売しています。数量限定でネットストア販売に限っていますが、毎年あっという間に完売しています。こだわりの有機農法で作った梅1キロと、果実酒用ビン、レシピのセットで5900円(クール便送料込)。
無印で扱うということは、街中で一人暮らしをしている若者がターゲットなのでしょう。
全国の梅酒をよりどりみどりでお取り寄せできる時代。彼らは自作の梅酒を漬け込んだ瓶をインスタグラムにあげることで、初夏の喜びを仲間と共有するのかもしれません。

どくだみもこの季節ならではの恩恵。名前やにおいとは似ても似つかない可憐な花をアルコールに漬けて、虫刺され用のエキスを作るのです。葉っぱでも作れますが、わたしはにおいが気にならない花だけを使います。
以前、子どもが河原の草むらに入って、短パンから出ている脚のほとんどの部分を蚊に刺されたことがありました。すでに脚全体がボコボコに腫れかかっていたのですが、どくだみエキスを何度かジャブジャブかけるように塗ったら、30分ほどで赤みがひいて、猛烈なかゆみもなくなりました。

らっきょうの皮をむいたり、どくだみの花を摘んだり、梅のへそをとったり……。
梅雨の合間の我が家の休日は、いつも粛々とした作業で暮れていきます。
こうして、来るべき暑い暑い夏に向け、少しずつ心と身体の準備を始めていくのです。